パート・ド・ヴェールの魅力


「幻の技法」パート・ド・ヴェール

「パート・ド・ヴェール」は、フランス語で「ガラスの練り粉」という意味で、パウダー状のガラスを型に詰めて電気炉で焼成する技法です。ガラスの起源であるメソポタミア時代から伝わる技法ですが、大量生産に向かないため、一時期廃れ「幻の技法」と呼ばれるようになりました。19世紀末のアール・ヌーヴォーの流行とともに再興され、様々な作家によって高級美術品が作られるようになりました。

元々、パート・ド・ヴェールという技法を知っていたわけでも、この技法を選んで始めたわけでもありません。たまたま知り合ったガラス作家の先生がやっていたのが、パート・ド・ヴェールの教室だっただけです。

ただ、最初に出会ったのが、このパート・ド・ヴェールだったおかげで、ガラスの魅力に惹かれていくことになります。

思い通りに好きな形がつくれる

パート・ド・ヴェールは、粘土やワックスで原型を作ります。

ものを作ることには以前から興味はあったし、ガラスも好きな素材でしたが、技法については詳しくは知りませんでした。ガラスを作るために粘土を使うなんて想像もしませんでした。小さい頃に、誰もが使ったことがある粘土。粘土で作れる形であれば、どんな形のものでもガラスになってしまうのです。この自由度の高さが、この技法の魅力の一つです。

作った原型を元に石膏の鋳造型を作ります。型にガラスを詰めて電気炉で焼成すると型の中でガラスがとけ、冷えて固まると原型の形のガラスになります。

ガラスの表情を楽しめる

石膏型に詰めるガラスは、クリアガラスと色付のパウダーを混ぜて使います。この時にパウダーを入れる割合で濃淡ができますし、クリアガラスの粒の大きさで表情が変わります。細かい粒のガラスを使うと不透明な仕上がりになり、大きな粒のガラスを使うと透明感が高く色はマーブル調になります。また、深い型の場合は、上の方に詰めたガラスが下の方に流れ込むこともあります。

このようなガラスの特徴を考えて、仕上がりを想像しながらガラスを選んで詰めていくのですが、思った通りに仕上がっているかどうかは、電気炉から出して石膏型を割ってみるまでわかりません。この石膏を割る時がドキドキワクワクする瞬間です。

石膏型から出したガラスは、表面を研磨して完成させます。この時の磨き具合でマット調に仕上げることも、光沢を出すこともできます。このように自分が作りたいものに合わせて色々な表情が楽しめるのが、この技法の面白いところです。